異世界ファンタジーを舞台にしたRPGといえば、主人公はほぼ例外なく勇者だ。
しかし『Travellers Rest』において、主人公(あなた)は酒場の親父である。
もちろんモンスターと戦ったり、お姫様を救出したり、世界を救ったりはしない。
あなたがすべきことは、お客さまに酒と料理、そして温かなベッドを提供することだ。
どういうゲームなの?
一言でいえば酒場&宿屋の経営シミュレーションゲーム。
ただし舞台は現代ではない。訪れる客はみな剣や斧を装備しているし、ステータスを開いてみればそこには魔法という言葉が出てくる。つまり剣と魔法の世界だ。
プレイヤーは簡単なキャラメイクを終えた途端、そんな剣と魔法の世界へと放り出されてしまう。目の前にあるのは、一軒の建物だけ。どうやらここが自分の経営する酒場らしい。
らしい、というのは操作方法やクエストなどのチュートリアルは用意されているものの、ストーリー的な説明は何もないからだ。これは一世を風靡した異世界転生というやつなのでは……と疑ってしまう。
対応プラットフォームはPC(Steam)で、日本語対応済み。
リリースは2020年7月28日だが、現在(2022年1月)もアーリーアクセス中となっている。
ひとまずしなければならないことは、酒場をオープンできる状態にまで持っていくことだ。
そのために周囲の荒れた土地を切り開き、伐採した木材を加工してテーブルやイスを造ったり、開墾して畑を作って食材を育てたりという作業が待っている。
単に経営シュミレーションだけではなく、クラフト要素もふんだんに盛り込まれているのがこのゲームの特徴だ。ただ酒場の親父としてカウンターの向こうで腕組みしていれば良い、というわけではないのである。
紆余曲折あって酒場をオープンさせると、今度は接客の忙しさが待っている。お客は行列こそ作りはしないものの、席が空くたびに入店し、すぐにカウンターへ来て料理やお酒を注文する。席数が少ないうちだと余裕はあるが、酒場の規模が大きくなっていくにつれてひとりでは回せなくなってくる。
また、お客はみな冒険者という設定なのかやたらと荒々しく、すぐにテーブルや床を汚してしまう。気付けばお店で出していない骨付き肉がなぜか床に転がっていたりもする。そのくせみんな綺麗好きで、汚れたテーブルや床をすぐに掃除しないと酒場の評判が下げられてしまうのだからたまったものではない。
ここがおもしろい! 好き!
- プレイヤーが営業時間を好きに決められる
自分は酒場の頑固親父なので(?)お店を開けるかどうかも自由に決めることができる。たとえば昼間に畑作業や食材の発注などの準備時間に充て、夕方になったあたりで「そろそろ店を開けようかな」と開店準備に取り掛かるのが楽しい。ランチとディナーで分けるか、通し営業にするかもあなた次第。ちなみにお店のオープン/クローズはワンクリックで可能だ。 - 自由に内装レイアウトができ、アイテムの種類が豊富
MMOのハウジングのような感覚で楽しむことができる。たとえば甲冑や剣を飾ってお城のようにしたり、あるいはぬいぐるみや花を飾って可愛いデザインにしたりと、一国一城の主として、自分好みの内装にしよう。しかし単に自分が見て楽しむだけではなく、良いインテリアは「評判」という数値でお店の評価に直結することを忘れてはいけない。とはいえ満足度を稼ぐことのできる備品は高価なので最初はなかなか手が届かない。 - トレンドが存在する
酒場の評価が上がってゆくと、いま世の中で流行っている料理やお酒が分かるようになる。ランダムで一定期間ごとに変わってゆくので、酒場の評判を上げるためにはトレンドに合ったメニューを出すことが重要だ。ローストビーフが流行っていれば牛肉を仕入れなければならないし、赤ワインが流行っていればブドウの種を仕入れて畑に蒔いたり、酒造の準備をしなければならない。ただ自分の好きなものを出しているだけでは、一流の酒場にはなれないのだ。
ここがつまらない! 惜しい!
- 従業員を雇うとヌルゲーになる
最初はあまりの忙しさに目が回りそうになるも、従業員を雇いはじめると話は変わってくる。はっきり言ってふたり雇うだけでもうホールに出る必要はなくなる。そうなるとキッチンにこもってお酒や料理を作ることになるが、それがいかんせん放置するだけなので単純にやることがなくなってしまうのだ。自分が働かなくとも、ガンガンお金だけが増えてゆく。ここまでヌルゲーになってしまうなら、料理をもっと手の掛かるものにすれば良かったのに、と思う。 - ストーリーがない
なんの説明もなくゲームが始まり、お客にはクセが強い人が多いのに、交流らしき交流もなし。イベントもほぼ皆無。これではRPG風の世界観にした意味がないのでは……というのが正直な感想。もしかしたら今後追加されるかもしれないので期待したいところ。自分は実直な経営シュミレーションがやりたいんだ! という方には逆に魅力な要素となる。 - お酒の種類が豊富……いや、全部ビールだこれ!
お酒が飲めない・興味がない人によっては、エールだろうとラガーだろうとペールだろうと全部ビールだ。一応酒場の評判が上がるとウイスキーやジン、果実酒などが解放できるのだが道のりが長く、はじめはお酒の種類少なっ!と感じるだろう。しかしおそらく中世ヨーロッパあたりの時代背景をイメージした世界観であると思うので、そんなに種類がないのも当然なのかもしれない。
全体的な評価まとめ。ゲーム実況に向いてる?
ストーリー性が無いというのはネックではあるものの、ファンタジーの世界で酒場と宿屋の店主になる、というのは多くの人に刺さるのではないかと思うし、押し付けられた設定が嫌い、ロールプレイが好きな人はハマると断言できる。また、古き良きスーファミ時代を彷彿とさせるドット絵のおかげで雰囲気はかなり良い。
「異世界居酒屋のぶ」や「異世界居酒屋げん」など、異世界転生+料理モノが好きな方にもオススメだ。
YoutubeやTwitchなどゲーム実況動画の投稿や配信に向いているかどうかは、正直イマイチ。
まず、そこまで知名度のあるゲームではないこと。
そして最初の何もない状態から発展させてゆくゲームではあるものの、いかんせん座れる席さえあればお客は常に満席状態なので、人気店にしたどー! という感動を視聴者と共有するのは難しいかもしれない。序盤の忙しさは視聴者も巻き込んで楽しめるかもしれないが、やがてプレイヤーがほぼ何もしなくてもお金を稼げる状態になってしまい、お金の使い道に困ったところで、プレイヤーも見ているほうも飽きがくる可能性が高い。
繰り返しになってしまうが、まだアーリーアクセス中。
今後に大化けする可能性も全然あるので、是非プレイしてみてほしい。
「参考になった」という方は、よければ他のゲームレビューにもお目通しいただければ幸いです。